「ハラスメント」「キャンセル・カルチャー」「マインド・コントロール」 言葉の定義を知らず、濫用して騒ぐバカなネット民に告ぐ!【仲正昌樹】
◾️「セクハラ」「アカハラ」とされる決定的な要因とは
法的・規範的な意味での「ハラスメント」と単なるトラブルや嫌がらせを区別する決定的な違いがあるとすれば、それは、前者が、実社会での権力関係に基づいているということである。セクシュアル・ハラスメントとアカデミック・ハラスメントが典型だが、職場や大学・学校等、権力の上下関係がはっきりしていて、上の者の言うことを下の者が受け入れざるを得ない、合意したように見えたとしても、実際には強制されていると見られる状況にあった、ということである。「パワハラ(パワー・ハラスメント)」という言葉は、(英単語としての元々の意味でなく、法・規範的な文脈での)「ハラスメント」の本来の意味からすれば、畳語だが、

「セクシュアル・ハラスメント」を法的概念とし定式化したのは、反ポルノ条例案でも知られる――BEST T!MESに掲載した拙稿『自発的に性産業で働いている人たちのことをフェミニズムは一体どう考えているのか?』を参照――ラディカル・フェミニストのキャサリン・マッキノン(一九四六― )である。マッキノンは、『働く女性のセクシュアル・ハラスメント』(一九七九)で、「最も広く定義したセクシュアル・ハラスメントは、不平等な力関係(unequal power)の文脈における性的要求の望まれない押し付けを指す」と述べている。